林さんちの子供達との稲作は、他とはちょっと違います。いわゆる「体験」ではなく「体験学習」なのです。体験だけだと単なるイベントで終わります。しかし学習と付くだけでまったく違います。
「この水は、どこから来るんだろう?」「なぜ稲は、育つのだろう?」
いろんな疑問を子供達で考えます。それを絵や文章にして行きます。
そのことが子供達の成長に大きく関わるのです。
苗見学
子供達との初対面の日でもあります。
子供達が植える稲の苗を触ってもらって実感を持ってもらいます。
「優しく触ってねぇ!」
どうだい?
「チクチクする!」「フワフワする!」と子供達の感じ方はいろいろです。
植えるのは、カグラモチです。
代掻き(泥遊び)
田んぼに実際に来てもらい代掻きをしてもらいます。
水は冷たいけど田んぼの泥は、暖かい。コンクリートに囲まれた生活をしている子供達には、貴重な「地球にアース」する機会です。
子供達に、この水はどこから来るの?と質問すると「富士山!」「エベレスト!」、、
「海!」、、まあ海からも供給されているのではあるけど。
正解は、「白山」、、
林さんちの田んぼは、霊峰白山から先人が引いた「七カ用水」のおかげで米作りが出来ます。
田植え準備
枠回し、、私が見本を見せて保護者にやってもらいます。
なかなか真っ直ぐ引けません。
「田植えのじゅもん」の伝授
「1本目は鳥さんの分、2本目は虫さんの分、3本目がみんなの分で3本植えてね」
1本だけだと鳥さん虫さんがお腹空いちゃう。たくさんだと鳥さん虫さんがお腹壊しちゃうよね。
だから3本で植えてね!
これは、「林さんちのいのちのじゅもん」動画として歌にもなっています。
田植え
枠で付けた方眼に3本づつ田植えします。幼稚園は30~100人の園児と保護者。小学校は、150人超の児童と保護者で植えます。
最初は、足を入れるのをためらっている子供達も一度入ってしまえば大騒ぎで植えていきます。
水周り
地元の野々市市立富陽小学校5年生の田んぼは、毎日の水管理もしてもらいます。入水口のパイプを傾けて毎朝入れたり止めたりします。
稲刈り
実りの秋を迎え楽しい収穫です。でも手刈りで使う「鎌」は便利な道具だけど危ないのでしっかりレクチャーをします。
「パパママは、腰を落とし左手で親指を上にしてシッカリ稲を持つ」
「子供は、パパママの左手の上をしっかり持つ」
「自分のお子さんの足や隣のお友達に気をつけて引いて刈りる」
この時に、腰を高くして親指を下にした「逆手」で刈るとどうなるか演技します。
そして保護者の方に「皆さんはもうすでに人生も半ば十分生きて来ました。でも子供達には、輝ける未来があります。絶対に子供達の手の下を持って守ってください!」と指導します。
稲刈りは、3株刈って束ねて1束にします。そしてその1束にまた3株刈って1束にしてバッテンにして置きます。3束+3束=6束にして藁で縛ります。こうしてバッテンにしないと子供達は、稲刈りで夢中で蹴っ飛ばしてバラバラになってしまい縛れません。悩んだ末に思いついたナイスな方法です。子供達には何度も「サン タス サンはぁ~~?」と聞いて「ロォ~ック!」とやり取りをして覚えてもらいます。
そして縛った稲束を運ぶ時は、赤ちゃん抱っこで運んでもらいます。子供達は、必ず運ぶ時に稲穂を上に花束のようするのです。すると自分やお友達の目を稲穂で突いたり前が見えないので転んだり稲束を落としたり大変です。最初、こんな農家なら当たり前のことが出来ないことに驚きました。いかに農業と実生活がかけ離れて来たかを感じました。でも一度教えると子供達は、上手に稲架干し(はさぼし)のために運んでくれます。
こうして現代にかつての農村風景が出現します。あまりの美しさにため息がもれる瞬間です。
足踏み脱穀
稲刈りの次は、脱穀です。
林さんちでは、昭和初期の「足踏み脱穀機」を使用しています。全国で稲作体験をされていますが脱穀は、稲刈り機械コンバインを使用している場合が多いようです。しかし林さんちはあえて手作業にこだわっています。
田植えと稲刈りは、「楽しい農作業」ですが脱穀作業は、「辛い農作業」です。体験学習である以上ここは譲れないところです。林さんちは、マイ足踏み脱穀を3台所有しています。幼稚園の中には、やはり3台所有して怒涛の脱穀をするところもあります。
足踏み脱穀機の両側にモーター係りの保護者二人そしてセンターに子供と一緒に稲束を持って回転する脱穀機の回転胴に稲穂を当てる保護者の3人チームで脱穀をします。足踏みミシンも触ったことのない現代の大人は、なかなか正しい回転方向に回せません。しかも意外に稲束を回転胴に当てると強く引かれるので稲束を手放してしまい回転胴に絡みつくトラブルもしょっちゅうです。それでも1時間以上もかかって脱穀をします。
唐箕
脱穀した籾をホウキとチリトリで集めて「フルイ」で藁や穂を除いて籾を選別して「箕(み)」に入れます。江戸時代以前は、この箕の籾を空中に上げて天然の風を利用して中身の無い軽い籾を飛ばして選別していました。林さんちでは、もう少し近代農具の「唐箕(とうみ)」を使用して選別をします。手回しで風を起こして軽い籾や藁クズを飛ばします。中身の詰まった重い籾は、下から出手来る優れものです。
収穫終了
子供達と行う稲作の作業は、ここまでです。
ここから先の籾摺りと精米は、林さんちの機械で行います。籾摺りと精米を人力でやっていた先人達のこと思うと本当に尊敬します。それほど脱穀など比較なら無いほど時間と労力が必要なのです。
収穫祭
収穫したモチ米で餅つきをします。
稲架干しでお日様の香りのする「世界一美味しいお餅」をみんなで舌鼓を打ちます。
感謝の会
野々市市立富陽小学校、金沢市内の藤蔭幼稚園、白銀幼稚園、白山市と津幡町のとくの幼稚園、野々市市内の扇が丘幼稚園の児童や園児から多くの感謝の言葉やプレゼントを頂いています。
こちらこそ子供達に元気を毎年頂いていて感謝の気持ちで一杯です。
さあ来年の子供達との稲作体験学習が楽しみです。
番外編 ポット稲での稲作体験学習です
林さんちの稲作体験学習は人気があります。でも一人でやるにしても出来る田んぼにも限界があります。そこでどうしてもやって欲しいという幼稚園でポット稲での稲作体験学習を試みてみました。バケツ稲は、よく聞きますがバケツだと重すぎて子供達が扱えません。
そこで小さいポットにしました。
ちゃんと秋には実りました。
稲刈りをしてミニミニ稲架干し、、一人一人の名札付きです(o^-^o)
脱穀は割り箸でします。
小袋に入れておうちに持ち帰りました。
来年はこれで種まきしようかな。
最後に
子供達との稲作体験学習は、子供達に生物が育つ様子を感じてもらう学習です。食といのちの大切さを教えるには土台となる体験と学びが無いと伝わらないのです。
平成8年から始めましたが当初は「物好きなお百姓さん」でした。しかし平成17年より「食育基本法」が制定されてからは、行政や地域の協力も多くいただきより加速しています。でも一人では、出来ることに限界があります。そこで周囲の農業者には、「え!子供達と農業体験していないの?」とうそぶいてやってもらえるように後押しをしています。
おかげさまで子供達と農業体験をする農業者も増えて来ました。
林さんちは日本農業を変えるのは
未来を支える子供達への食育活動だと信じています。